ノミネートされた短歌全108首から
「推したい短歌」を選んで投票しよう!
投票期間は2020年12月30日〜2021年1月1日まで
そんな理由で乱気流に突入しちゃうんだーってびっくりしました。機長の無邪気さが可愛けど怖いし、これアナウンスする人もどういう感情なんだろう。忘れられない一首になりました。
擬人法とはすなわち混乱の事だ。嘘を仕立て乗り越え何かに到達しようとしてできない絶望だ。つまり恋の本質と同じことだ。
この歌世界で本当は何も起きなかった。ミカは産まれてさえいない痛い悲しみの涙だ。
なんて自由でなんて面白いんだ。どこまでも挑戦的で、いつまでも若者のような黒瀬珂瀾の凄まじさ。
歌集出版のいきさつをTwitterで知って手に取った一冊なので、自分はある意味純粋な読者ではないんじゃないか、そんな迷いがあったのですが、読み始めたらそんなことどこかに行ってしまいました。遙かでやさしい眼差しに、どこか杉崎恒夫さんを思いました。うんと先の笹本さんのお歌も読みたかった……。
いしゃどう「音声一首評週間」の「【武田穂佳を読む週】『求心』」で紹介されており、ハマりました。
https://twitter.com/hito_genom/status/1322565814889795586?s=20
「小さなものが静かに崩壊する、ささやかな不安の投影である。」
土岐 友浩「ウはウィルスのウ?」より引用。砂小屋書房 月のコラム https://sunagoya.com/jihyo/?p=2197
短歌研究2020年9月号短歌研究新人賞の選考コメントです。
「他人行儀な見方でないかと思って、一位二位には推せなかったです。でも今お二人のお話を聞いていると、そこにかえってこの作者が一連に込めた意図があるのかなという気がする。」栗木京子
(連作全体に対して)「コロナ禍を扱った作品のなかで、状況を一番捉えていると感じました」斉藤斎藤
恋人と日常を共にすると最初は違和感や戸惑いを覚える。そのことを舟に人が入ったときの揺れで表現した。「けれど」で止めた余韻がいい。(選者の東直子さんのコメント)
羊の皮をかぶるという表現はありきたりだが、その羊の皮が脱がれ残されたという表現が衝撃的でした。少年はとうとう今までの自分から脱却し、教室に残るクラスメートはまさに羊の皮の抜け殻を見るような呆然とした様であったのでしょう。題の「狼」を使わずに狼を表現されているのも巧みです。
万華鏡の中で偶然できる形に観覧車、それも夏と冬の違いがあるものを見出そうとする繊細な美的感覚。たった一人の瞳の中の儚さと華やかさ。(評 東直子(選者))
分からないんだけど、でも凄く分かる、という絶妙な感覚を捉えている歌だと思います。
比喩力による歌の深さと広さ
第5回氷川短歌賞で、選者であった堂園さんの作品として発表された歌です。 https://itabashi-hikawa-lib.jp/2020/07/53.html 「歌が声をまとって君にあらわれる」という上の句の視点がもう、それだけでロマンチックだなと。「艶めいて」という強い結句に説得力をもたせるのって実はとても難しいバランスだと思うのですが、それを難なくやってのける上の句の美しさにしびれました。
多分誰もが体験したことがある風景の上の句に対し「答えが出たら終わりにします」という下の句が来ることで世界の解像度が上がった気がします。大切なことを考えているのか、そもそも答えなんかないのかもしれない。けど、あの、ガードレールに触れながら歩いた時の記憶に何か意味が付け足されるような素晴らしい短歌だと感じました。新井さんの短歌はいつも美しくてどこか懐かしいのに、本人にしか本当の意味がわからないところが大好きです。これからも応援しています。
親目線で読みました。もう言葉には尽くせない「思春期」特有の症状が、こんなにも柔らかく表現されているところに惹かれました。
アナコンダさんの歌は視点が美しく、情景がふわっと浮かぶようです。
この歌は絵画のようで、なんども読み返して、その景色に浸ってしまうような魅力があります。
寿司屋に行くとよぎるし、なんなら寿司屋に行ってないときもよぎってます。刺身部分がずれた状態を「リクライニング」って言うセンス、最高です。
娘さんたちのひとりだちを見送る連作(引用はその一首目)。
子供との時間はいつまでも当たり前にあるものじゃないんだなぁ……って。もし前々からわかっていても、そのときがきたらやっぱり「突然のこと」って感じてしまうんだろうな……。
5月号には、遠路自転車で自家製パンを届けにいく連作が載っていて、そちらも好きです。
自分で書いた評です→ https://hiraide-hon.tumblr.com/post/634122955965759488/20201106
(運営注釈 ここでの「自分」は推薦者本人のコメントです!)
自分で書いた評です→ https://hiraide-hon.tumblr.com/post/629064544290062336/20200912
(運営注釈 ここでの「自分」は推薦者本人のコメントです!)
視覚ではなく聴覚によって捉えられた「妹から姉へ」の像が美しい。(評 穂村弘(選者))
思い出し笑いのような、という比喩がめちゃくちゃいい。素直に読めば、景としては「熱気球」そのものの現象を歌っていると捉えられるが、この比喩があることで、景に奥行だったり、仮託された何か大きな余白が想像できる。本来「熱気球」という『絵になるもの』は、もっといろんな切り取り方があるはずなのだ。青空に自由に飛んでいく様子だったり、「熱気球」によくある鮮やかなデザインを歌ってもいいかもしれない。でもその中で敢えて「ときおり揺れを生む」を切り出してきたセンスに作者の主張がとてもよく出ているし、その原動力として「思い出し笑いのような温もり」を持ってきているところで、その主張に大きな説得力が生まれている。「思い出し笑い」はおそらく『人間』特有のものだと思うが、それはときに「揺れ」でもある。それはもしかすると、すこし怖いかもしれないが、「温もり」の産物なのだと捉えるやさしさ。そんなことを歌の余白に感じた。引用: https://twitter.com/2nd_tanka_award/status/1335231250697613312
作者の実体験の歌で、絶賛恋愛中だそうです。
初見ではバイスサワーを知らなくて調べたのですが大衆居酒屋でよくあるピンク色のお酒ですごくいいチョイスだと思いました。
間接キスの歌で、美味しいから共有するのでなく味が薄いということから、相手からの好意があるのはわからないけれど、作者はドキドキしつつ喜んでいるということがわかります。
ゲスト出演された俵万智さんがこの歌を1位に選んでおり、場面の切り取り方が的確で過去や未来も想像させる豊かさを含んでいて過不足ない歌と評していました。
出典 【俵万智さん登場!!】第8回芸人歌会(https://youtu.be/cZCeECAG2mc)
榊原さんの歌は、上の句から詩的飛躍があって下の句の具体に落ちるものがいくつかありますが、その中でも言葉で説明できない説得力と美しさを感じたのがこちらの歌でした。
(運営注釈 榊の示はネです。変換ができず”榊”表記にしております)
今年は鈴木さんの短歌にたくさん楽しませてもらったのですが、なんでこんな歌思いつくんだろう!?となったこちらを推薦します。どこまでも笑える展開でちょっと切なさもあって素敵です。
今まで出会った言葉では言い表せないほど大切な出会いの歌なのだなと思いました。類義語の森であなたを探していますという表現が本当に好きです。
完璧な一首。初めて見た時からずっと好きです。最初に読んだ時はうわーこの人天才かもしれんね かっこいい短歌読むなぁという強烈な印象がありましたが、何度も読むうちに内在される物語について考えるようになりました。君の住む星はどこなんかなとか、正規ルートを辿るともっと時間がかかるんかなとか。ファーストインプレッションの美しさ かつ 読み手がたくさんの可能性を考えられる素晴らしい短歌です。
街灯は下を歩く人や街を照らすものと思いがちですが、夜霧の中でもお互いだけは見失わないで照らし合っているという情景がまず素敵です。
また、その情景のように誰かと向き合えたなら、という願いが囁くように胸に響きます。絵画のような歌でした。大好きです。
音の響き合いや意味の重ね合わせから、この状況に至るまでの「ドラマ」を濃厚に感じさせてくれました。
右隣で眠っている大切な人の寝息が「何億秒」もの時間をかけて届いたかけがえのないひかりである、という表現がとてもあたたかいなと思います。また、寝息だけでなく「きみ」がこんなに近くにいるという奇跡に対する主体の胸の高鳴りが伝わってきます。素敵な歌で大好きです。
わたしの中で一番の短歌です。これを抜く短歌が見つからないです。
フリとオチを一首の中でどう効かせるか、は短歌を作る上で私自身とてもこだわっているところです。この歌は第四句までフリを貯めに貯めて、最後、結句で最高のかたちでオトせていると思いました。
はてなダイアリーで短歌を発表されていたころ、好きすぎてこっそりプリントアウトして持ち歩いていました。まとめて読めて嬉しい!
テーマ「戦い」で詠まれた歌です。
長年様々な戦いの場面で多用されてきた伝統のあるじゃんけんになんと新メンバーが現れるという歌。しかもそれはピャーという全ての手に負ける手。歌会の中ではガンジーのような手という評もありました。じゃんけんという競技には負けるが、もっと大切な何かには勝てるのではという評も出ていて、弱い手かもしれないけれどみんながピャーを応援したくなるような素敵な発想だと思いました。
出典 芸人歌会特別版〜芸人VS歌人 短歌合戦!(https://www.youtube.com/watch?v=CWdaOZqm7eE)
テーマ「仕事」で詠まれた歌です。
芸人歌会という芸人さんが真剣に短歌を詠むという企画で、1番芸人さんならではの職業詠が珍しくてとてもおもしろいなと感じました。
作者は芸人としての仕事の他に飲み屋さんでアルバイトをしており、その2つの仕事について詠んだ歌で、普段ツッコミを担当している作者に酔っ払った客が「なんかギャグとか面白いことやって」と絡んでくることに対し、「無能だもんで」と謙遜しつつ無茶ぶりに腹立たしさを隠しているという歌です。
出典 第6回芸人歌会(https://youtu.be/HugwLE_g_To)
重力や海といったとても大きなスケールのことを詠み込んでいるにも関わらず、下の句では目に目薬を落とすといったささいな日常を詠んでいて、惹き込まれる歌です。また、リズム感も良く、「引く手のように海に雨、」声に出して読みたくなります。
すっかり母になりきって、小さな子の腕を持って手を振らせる友。場面の取り方、イメージの描き方が絶妙。選者の佐佐木幸綱さんのコメント
こんなにもすべてゆだねたくなる絶望があるのだと知りました。
えいしょ2020誌上に書いてます(平出です)
イメージの壮大さ。自らの想像した虚構が、しかし神の創造した真実でもあるかのように思わせる陶酔。配合の距離の絶妙。空白の効果。叙述の構造の分かりやすさまである。短歌の抒情性にまるで俳句のような切れ味だ。
あの厄介なアボカドの種を、こんなに軽妙に読める感性が素晴らしいと思いました。作者もきっとおおらかなひとなのだろう、と楽しく読めました。
Kindle限定の歌集からです。
http://blog.livedoor.jp/nenkinkakai/archives/22068818.html
(運営注釈 粘菌歌会第27回「LOVE」のページに飛びます)
『外出』は同人誌です。
「夕焼け」はとかく短歌をエモくするために用いられがちなフレーズだと私は思っているのですが、この歌は、下の句の「夕焼き」が良い意味でそのエモさをチャラにしています。そしてチャラにしたことによってむしろ、「きみ」と作中主体との関係性がにじみ出てきている気がします。
「言葉を持たない乳児は神聖な感じがする。言葉がない分、ダイレクトな命と命の触れ合いがあるのだろう」NHK短歌 2020年2月号大辻隆弘コメント
「胸から流れ血のようで」という表現が本当に好きです。情熱と淋しさを感じ、ふとした瞬間に何度も思い出すような一首でした。下の句で二つの意味が取れるような構成になってるのもかっこいいです。
これからも応援しています。
「花 月 雪 星 宙」という普通は一首の内に共存できない要素が組名として並列される巧みさ。それを可能にする宝塚の華やかなイメージ。
「ラメ入りや明るい色の髪ゴムをつけるのは一部の目立つ女子たちだけで、私はずっと紺の髪ゴムでした」という作者のコメントがありました。校則が変わって「自由」になったけど、「紺」はもともと許されていた「色」なんだろう。「紺の階級」という云い方が残酷かつ詩的に胸に響きます。選者の穂村弘さんのコメント
(この次の歌からは推薦者コメントなしでノミネートされた歌です。)