今年の短歌

2022上半期

結果発表

今年の短歌とは?

Twitterから万葉集まで「今年こころに残った短歌」を記録するweb企画です。対象は「今年1〜6月に読んだ歌」で発表媒体は歌集/同人誌/総合誌/新聞/ネット/結社誌/ネプリなんでもOK1人1〜3首エントリー可能。他薦のみを受け付けています。


これまで「推したい短歌」として開催してきましたが、3年目の今回はコンセプトに合わせて「今年の短歌」に名前をあらためました。世の中に公開された歌を全て追うことはできませんが、一人ひとりの心に残った歌が集まると、思いがけない良い歌との出会いがあるはず!という願いを込めています。


たくさんの推薦をいただきありがとうございました🙇‍

ノミネート 92 首 🎉

(見やすくするための番号を各歌につけています)

#1

空じゅうにブルーシートがかけてある天国はまだ工事中だな


/ RUKA  2022年03月04日うたの日題「工事」

https://twitter.com/yanakasyoga


推薦した人: https://twitter.com/northmount836

コメント: 青空を「空じゅうにブルーシートがかけてある」としたところに歌心を感じたのと、下の句の「天国はまだ工事中だな」という表現が天上での出来事を温かい眼差しで捉えていて近未来的でもあるのに強く惹かれました。



#2

内側の骨をさらしてうつくしい日傘で立てば全きひとり


/ toron*  2022年03月15日 うたの日 題 『 側 』http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2906g

https://twitter.com/toron0503


推薦した人: https://twitter.com/kamin_plz

コメント: 初夏のころ日傘をさして一人佇んでいると、不意に風がやみ音が消え、その瞬間、日傘の内側がまるで世界から切り離されているように感じた……というシーンを想像しました。上の句から伝わってくる、ゴシック調のような独特の美しさに圧倒され、深く心に残りました。


推薦した人: https://twitter.com/xi_zhen_ivUT

コメント: 真っ白な日差しの中、独り立つ作中主体の姿が想起された。さらしているのは日傘の骨に他ならないはずだが、読んだ感触として主体の溢れるような自意識が景にみちみちているようで、それが冒頭の〈白〉い画面へと意識を還元する。孤独の描きかたとして、特別な次元にある歌のように思った。



#4

かすかでも波は波だね光からうまれる馬のたてがみ、おいで


/ 丸山るい  2022年05月05日 Twitter

https://twitter.com/in_ruins


推薦した人: https://twitter.com/nkmrik



#5

わたしはぬいぐるみをまもる ぬいぐるみはぬいぐるみとしてわたしをまもる


/ 永汐れい  2022年03月06日東京新聞 東京歌壇 東直子選

https://twitter.com/rei_nagashio


推薦した人: https://twitter.com/nkmrik



#6

グッモーニン人生どうでも飯田橋人生どうにか鳴門大橋


/ 初谷むい  歌集『わたしの嫌いな桃源郷』(書肆侃侃房,2022年)

https://twitter.com/h_amui


推薦した人: https://twitter.com/autumn_o_tcbn

コメント: 一読して頭から離れなくなってしまった歌。だって、「人生どうでも飯田橋」だよ!!「人生どうにか鳴門大橋」なんだよ!!!「グッモーニン」で始まっててご機嫌な感じなのに、どこか諦めたような感じもあって、それでいてほどよく前向き...。幸も不幸もユーモラスに捉えて乗り越えていく感じもして、お守りにしたい歌です。



#7

永遠のような沈黙 ありがとうくらいふつうに言わせてくれよ


/ アライアヤ  https://twitter.com/araiaya31/status/1529464335017201664

https://twitter.com/araiaya31


推薦した人: https://twitter.com/natsunoyuugata

コメント: おそらく長く付き合ってこられた吃音について、淡々とかつ毅然と詠みあげた一首。うたというかたちに昇華されたことで、かなしみだけでおわらない強さ、強くならざるをえなかったこれまでの戦い、を感じてとても印象に残りました。



#8

税込で五どんぐりです。二どんぐり、来年植えるのに使います。


/ いぬなり  2021年10月19日 うたの日 題「税」

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/onborn6

コメント: 最初は、ふふっと笑える微笑ましい一首だと思いましたが、よく考えたら「税」とはそういうものだと気付かされました。主体はリス等の自然界で生きる動物なのでしょう。リス達なりに、自分らが生きていく社会が継続させるための工夫が見えました。五分の二というのもまた良いです。題に対して誠実でとても好きです。リアルとファンタジーのバランスが絶妙でもありました。人間的に考えるとあり得ないことなのに、税金をモチーフにしているから現実味があり、そこが僕にはどうしようもなく面白いのです。



#9

積もらない淡雪だって知っていて祖母になんども教える日付


/ カラスノ  2022年3月8日 うたの日 「淡」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2899i&id=37

https://twitter.com/karasunosan


推薦した人: https://twitter.com/mu_tsu_ki_s

コメント: ちょうど私が色々な短歌を読み始めたころに出会い、はじめて「こんなにも美しくかなしく、それでいて優しい短歌があるのか」と思った歌でした。認知症だった祖母の話が出るたびに思い出す歌です。



#10

輝けどきみに触れ得ぬ星よりも風になりたし その日が来たら


/ キール  ラジオ「短歌部カプカプのたんたか短歌」2022年3月15日放送 題詠「星」

https://twitter.com/madame_kir


推薦した人: https://twitter.com/nakamurarobot

コメント: 美しくも儚い歌。ひと目で好きになりました。


推薦した人: https://twitter.com/3hohenheim

コメント: 共感もあるが、それ以上に、歌ならではの良さが際立っている。冒頭から読んでいくことで味わえる美しさや、披講により音声で読まれ聞かれることでこそ生きる構成、すとんと胸に落ちる結句……こういう歌を作りたいし、こういう歌に出会いたいと願います。



#12

砕けても砕けてもまだ遠い月 きみにうまれてぼくにあいたい


/ くぅ  2022年04月03日 うたの日 題「砕」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2924a&id=51

https://twitter.com/miffy_x21


推薦した人: https://twitter.com/Honofuwar

コメント: とてもインパクトの強い一首でした。おおきな想いがありながらも、触れたら壊れてしまいそうな繊細なうたです。



#13

燃えている炎も言葉も君のため私は私のために生きれず


/ だし巻き卵  https://twitter.com/ayyn_t/status/1491044847532212225

https://twitter.com/ayyn_t


推薦した人: https://twitter.com/SikuShinku

コメント: この弱さに身に覚えがありました。



#14

かなしみが法人格を持ったなら株式会社かなしみですね


/ ねむけ  https://twitter.com/nemuket/status/1414785039754137602

https://twitter.com/nemuket


推薦した人: https://twitter.com/autumn_o_tcbn

コメント: とにかく一読して好きになってしまった歌。「かなしみが法人格を持った」らどうなるんだろう、感情が法人格を持つなんて考えてみたこともなかったな....という新しい発見とドキドキからの、「株式会社かなしみですね」というそのまんまの着地。本当にそのまんま!でも、確かにそのとおりで何も間違ってないんだよね。気持ちよく拍子抜けさせられた大好きな歌です。



#15

部屋で見る蛾は外で見るよりもっと 怖い 家ごと燃やすしかない


/ ヒプノ寿司Mike  http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2984g&id=3

https://twitter.com/xHksbNR4wv1wj8M


推薦した人: https://twitter.com/yaotanka

コメント: わかります……家の蛾怖いです。すごい怖いです。家ごと燃やそうって思ったことあります。(山育ちでしてね)ポイントとして怖いの前後の一字明けをあげたいのですが、「もっと怖い」とせず、前もあけた事が効果的だと思いました。怖いの強調、強調につぐ強調ですね、そこで息をつくことによって読む時も落ち着いて結句の燃やすしかないを堪能できる、というわけです。好きでした



#16

蟒蛇(うわばみ)の胃液のような地下水がぽたりと落ちる隧道を行く


/ ふうらい牡丹  2022年5月21日うたの日題「隧道」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2973c#c20220521005

https://twitter.com/Button_furai


推薦した人: https://twitter.com/tom_moizumi

コメント: 大胆な見立てに惹かれました。暗さと湿り気が感じられ、主体の歩む場がトンネルではなく、まさに題そのものの「隧道」となって立ち上がってくる歌だと思います。(うたの日コメントより)



#17

「川越」の次に「川越市」についただけでなんだか少しつかれた


/ ぷくぷく  2022年02月06日 うたの日 題「次」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2869h&id=43

https://twitter.com/pukupuku2020


推薦した人: https://twitter.com/negototoshi

コメント: ほんとうに疲れているときって、こういうかんじだなあととても共感しました。長距離を乗ってて疲れるのは当たり前だけれど、「川越」から「川越市」のとても短い距離で「つかれた」と思ったことで、自分はほんとうに疲れていると自覚してるかんじがしました。川越が二回でてくるんですが、なんか川越市の川越は二回目だからかくたびれてるかんじにもみえました。ぷくぷくさんの歌はほかにもたくさん好きなのがあるのですが、この歌がやっぱりどうしても気になってしまいました。とても好きです。歌集をだされるときは、ぜひ入れてほしいなと思うくらい好きです。



#18

「Question Question ぼくオバQ〜」と商店街を抜けるママチャリ


/ ふにふにヤンマー  2022年03月04日 うたの日 題「?」

https://twitter.com/funifuniya


推薦した人: https://twitter.com/akazomewemon

コメント: なんでもない光景なのに、上の句のリフレイン(オバQの歌の歌詞)が衝撃的でした。題詠「?」からこの発想ができるのは素晴らしいですし、ユニークで作者の作品のなかでも好きなお歌です。



#19

ディストピアじゃねえかこんな牛丼の株主優待券ばっかりで


/ ミドリムシのミドリム  2022年5月23日 うたの日 題「ぴあ」

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/wakuwakuiwaku

コメント: ディストピア短歌で一番好きです。



#20

牛の仔の見つめる視線ぬるやかに乳を奪った我もきょうだい


/ やぎやま  2022年3月13日うたの日お題『牛』

https://twitter.com/yagiyama_grape


推薦した人: https://twitter.com/northmount836

コメント: 牛乳を飲んでいるところを牛の仔の視点から詠んだところが面白いと思いました。「ぬるやかに」は造語ですが、人である主体が牛乳を飲むのを牛の仔が冷めた目で見ているのが感じられて下の句の「我もきょうだい」で主体がハッとして牛の仔と共生している現実を突きつけられている風に読みました。味わい深い一首です。



#21

新幹線町も暮らしも移りゆく廃線になるここがふるさと


/ ゆや ゆき  2022年5月2日発行鉄道短歌春報

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/kame073

コメント: 連作「廃線になる」の最後の5首目です。新幹線が走る未来廃線になる未来それでも「ここがふるさと」は変わらないなと。最後をこの言葉で締めたのが印象深いなと思いました。



#22

雨宿りさせてください美しい弧を描くそのキャップのつばで


/ 伊藤ちえ  twitter(歌会で発表したものをTwitterにて公開)

https://twitter.com/chie110


推薦した人: https://twitter.com/autumn_o_tcbn

コメント: これはもう、読んだ瞬間に、美しいのは君だよ!!と心掴まれてしまった歌です。キャップのつばを「美しい弧を描く」って表現してるところがもう大好き。キャップを被っている主体に好意があるからこその表現なのか、雨の滴るキャップのカーブが美しく目に留まったからなのか...。そもそも主体は、キャップのつばで雨宿りができるサイズ感なのか?できないって分かってて敢えて言ってるのか?だとすると...と色んな考えが浮かびました。丁寧語から始まっていることもあり、全体的に柔らかくて瑞々しくて好きな歌です。



#23

ブーンってハチが来て「ブーンっていけば花ー」とブーンって行っちゃう


/ 宇佐美りょう(宇佐美)  2022年02月10日 うたの日 題「自由詠」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2873a&id=49

https://twitter.com/usami_Hans


推薦した人: https://twitter.com/withoutSSRI

コメント: 一読で衝撃。すぐに何度も何度も読んで覚えました。蜂の通過を「ブーン」とリフレインさせて3コマで描いている面白さ。その中で「ブーンっていけば花ー」の独自性が光っています。しかもその言葉を受け止めるのが「と」。「って」ではない軽く素早い着地が、この歌の軽妙さを高めている。間違いなく「その作者にしか書けない短歌」なのだと思います。大好きです。



#24

夕焼けがさっき終わって濃い青に染まるドラッグストアや神社


/ 永井祐  歌集『日本の中でたのしく暮らす』2012年

https://twitter.com/nagaiyu02


推薦した人: https://twitter.com/pandakirinkaba

コメント: この歌を読んだときに映像が脳の中に強烈に立ち上がりました。胸が苦しくなるような郷愁を感じます。短歌ってすごいなと思う、大好きな一首です。



#25

傷ついた蛇ならみんな踏まないし ごめんそういう感じで愚痴る


/ 乙村藍里  2022年3月31日 https://twitter.com/airi_tanka31/status/1509435345506476034

https://twitter.com/airi_tanka31


推薦した人: https://twitter.com/gententanka2022

コメント: 比喩としての踏まれた蛇というイメージをダイヤローグ(他者への宣言)へと結びつける発想の良さ。



#26

急に来たお客のように初雪はわずかばかりの滞在で去る


/ 音羽凜  東京歌壇 2022.2.6

https://twitter.com/oto_wa_rin


推薦した人: https://twitter.com/ume_dori

コメント: 初雪の擬人化が違和感なく入ってきて、共感性の高い素敵な歌でした。



#27

俺はもっとでっかくなって銀河ごと抱きしめてやる星のなきがら


/ 音忘信  http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2989e&id=3

https://twitter.com/onborn6


推薦した人: https://twitter.com/yaotanka

コメント: 大らかに詠む、という題に対して限りなく寄り添っていて素敵だなぁと思いました。デカいの規模がデカすぎて驚きました。音忘の歌は共感と驚愕のバランスがよくていつもうまいなぁと思っているのですが今回驚愕よりの珍しい歌でした好きです。包容力パないんじゃよおまえ……



#28

別れとはそういうもので質入れのギターは知らない人に抱かれる


/ 音忘信  2022年3月10日 うたの日 「自由詠」

https://twitter.com/onborn6


推薦した人: https://twitter.com/mu_tsu_ki_s

コメント: 一読して好きになった短歌です。歌全体から漂う哀愁やままならなさに「納得がいくかどうかに関係なく、物事を受け入れなければならない瞬間がある」ことを突き付けられるのですが、上の句の「別れとはそういうもの」に寄り添ってくれるような感覚があり、とても素敵な歌だと思います。



#29

くせっ毛は正しいことではないですか 生きてきたのは正解ですか


/ 歌眠  2022年4月24日うたの日 題『矯正』

https://twitter.com/kamin_plz


推薦した人: https://twitter.com/SikuShinku

コメント: 生まれ持った髪を嘘にされてしまった中学時代を思い出しました。毎朝仕方なくアイロンでうねりを正している時や、怖い先輩方に目をつけられた時自分の個性が何かの罰のように感じていました。「生きてきたのは正解ですか」がまさにそう、すごい破壊力だと思います。



#30

前髪をぱつんと切れば水切りをしすぎた菊のようなまぶしさ


/ 海月莉緒  2022年05月12日 うたの日 題「しすぎ」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2964a#a20220512019

https://twitter.com/cai5040


推薦した人: https://twitter.com/nogawatmoki

コメント: 三十一文字がたっぷりと清冽な水に満たされているようで、自分にはこんなの絶対詠めないとため息が出ました。



#31

ふたりで歩く道のさきにも道なのと14時の風のなか思った


/ 海野いづれ  短歌通信「遠い窓」003.映画のにおい https://tooimado.theletter.jp/posts/a8b5e280-dc3d-11ec-b3d7-c712f3dc3086

https://twitter.com/uminoidure


推薦した人: https://twitter.com/raccoon_496

コメント: ふたりで歩く道、の先。どこかに進むための道を歩けば、またそのどこかからどこかへ進むための道があって、でもそれはなんだかさみしくもあるのです。「道なの」は反語的に響いて、でも言葉にはならない、風のなかで反芻されるのみです。道は無音のなかで繰り返されるのみです。だけれどいつか終着駅や桃源郷にふたりが着いて(たぶん着かないけれど)、そういう空想の余地を残しながら、やっぱり道に続くものは道なのかもしれません。



#32

意味のような季節があってそれだけがいつまでも光らないで欲しい


/ 街田青々  2022年05月20日 うたの日 題「まで」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2972c#c20220520021

https://twitter.com/bluesuqreme


推薦した人: https://twitter.com/raccoon_496

コメント: いくつも過ぎた季節のなかで、ただひとつだけ特別な一連の記憶があって、それがなにか意味のように、意義のように残留している。それでもいつか、その意味としての季節が清潔に光ってしまうとき、美しく輝いてしまうとき、やがて季節は季節の意味を失ってしまうかもしれません。たとえば不潔で、いびつで、ほの暗い季節も孕むからこそ、中立的にだれかの「意味」としてあり続けることができるのでしょう。あるいは、大切な無意味として。



#33

魂に十グラム足す焼きたてのホットサンドにバターをのせて


/ 丸山萌  結社誌「塔」2022年5月号作品2

https://twitter.com/marumoe_


推薦した人: https://twitter.com/midiumdog

コメント: 食べるという行為は、生きるということに直結する。仕事で気合を入れるときや何か辛いことがあって自分を保たなきゃいけないとき、魂に力を入れることが必要で、その力の入れ方を焼きたてのホットサンドにバターを載せることで例えているのが秀逸。バターが溶けていく感じも、比喩の情景なのにしっくりくる。



#34

月にある暗さを海と呼ぶようなしずかな救いをまだ待っていた


/ 丸瀬まる  月刊うたらば 2022年5月号 テーマ「月」https://www.utalover.com/read/mutalover.html

https://twitter.com/maruse__maru


推薦した人: https://twitter.com/hiwa_towa

コメント: ずっと昔に習った月の海という語から、今新しくやさしい景色が開けるような気持ちになるお歌でした。



#35

新香巻きひとつかじって後はただ黙って下を向いていました


/ 岩瀬百  うたの日22年3月21日『 寿司 』 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2912e&id=29

https://twitter.com/momo_iwase


推薦した人: https://twitter.com/xHksbNR4wv1wj8M

コメント: 料理と主体の組み合わせが魅力的です



#36

炭酸のごとくさわだち梅が散るこの夕ぐれをきみもひとりか


/ 吉川宏志  歌集『青蝉』(砂子屋書房,1995年)

https://twitter.com/aosemi1995


推薦した人: https://twitter.com/imaconsida

コメント: コメントを書くまでもないですよね。かっこいいですよね。



#37

さよならを言われっぱなしの大戸屋であなたを語り尽くしたかった


/ 吉村おもち  2022年4月25日 毎日新聞 毎日歌壇 加藤治郎・選

https://twitter.com/mechanobiru


推薦した人: https://twitter.com/hicrown

コメント: 引き止めたかったのではなく、「語り尽くしたかった」というのが切実で印象的でした。語り尽くしてしまったらその先はなくて、それでも「あなた」の話をしたくて、でも「あなた」はそれすらもさせてくれなかった。そんな一方的なさよならを「大戸屋」のワードがどことなく緩め、全体に親しみを持たせていて、自分のことのように切なくなってしまいました。



#38

東京と心中したら並ぶでしょう14000000個のお墓


/ 吉田山甲(人魚の呪い)  2022年1月6日うたの日 題「心中短歌」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2838a&id=4

https://twitter.com/yaotanka


推薦した人: https://twitter.com/withoutSSRI

コメント: 乱暴ながらそれが魅力の、パワーある短歌だと思いました。冴えた出だし。主体は都市単位と心中をしようとしている。建つのは東京の人口分のお墓。心中で死体があがり全てに墓が建つというシュールなイメージを「並ぶでしょう」と断言する潔さ、切実さ。視覚も音も面白く印象的で、何度も思い出してしまうお歌です。



#39

止まらないロマンティックを止める気もないから白のワンピで行くか


/ 橘 亜季  うたの日2022年5月23日『ティック』 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2975c&id=35

https://twitter.com/autumn_o_tcbn


推薦した人: https://twitter.com/xHksbNR4wv1wj8M

コメント: 飄々としている女性主体が魅力的です



#40

もういないひとに届ける花だからひかりのほうへ運ばれてゆく


/ 桐島あお  NHK短歌2022年5月号 #短歌写真部

https://twitter.com/natsunoyuugata


推薦した人: https://twitter.com/ume_dori

コメント: #短歌写真部に掲載された歌で、写真との親和性が非常に高いですが、歌単体でもグッとくる内容でとても好きな歌です。



#41

熟れすぎた無花果を裂く 産めないと知ったわたしの手にもおやゆび


/ 桐島あお  2022年4月9日 うたの日 「無」

https://twitter.com/natsunoyuugata


推薦した人: https://twitter.com/mu_tsu_ki_s

コメント: 女性ならば誰もが一瞬息を止めてしまいそうな内容を美しく、切実に詠まれており私にとって忘れられない歌の一つになりました。産めないと知ってから、事実を受け入れるまでの心の揺らぎを感じるような言葉選びも秀逸だと思います。



#42

鬼だけがさがしてくれた隠れんぼわるいひとでも必要でした


/ 桐島あお  うたの日 題「隠」

https://twitter.com/natsunoyuugata


推薦した人: https://twitter.com/NTR_s2s2

コメント: 主体の持つ孤独が前半にあらわれていてとても好きな歌です。わるいひとの解釈がわかれるところですが、他の人から見たらわるいひとだけど、主体にとってはいい人であってほしいな…という気持ちもありつつ、主体の心の隙間に入り込む悪い人という解釈も好きです。



#43

夕暮れに「さしみかった」とLINEせば読み間違えて優しくなる妻


/ 具志川具志男  結社誌「未来」2022年4月号

https://twitter.com/gushikawagushio


推薦した人: https://twitter.com/mugitauros

コメント: 歌会で話題になった歌。かっこ内をよく読みましょう!



#44

ありったけのミーアキャットに紛れてもいちばんキュートな八重歯が俺だ


/ 栗田悠太郎  57577展「みんなの短歌募集」伊藤紺選 テーマ『どうぶつ』

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/onborn6

コメント: 格好良さと可愛さのなかにユーモアが溢れていてとても好きでした。主体は人間と読んだのですが、それにしても「ありったけのミーアキャットに紛れてもいちばんキュート」とは恐れ入ります。ミーアキャットは立ち姿のイメージがあります。そのフォルムは人間っぽいですが、正直なところ、人間より断然キュートだと思います。人間が対抗できるのはそれこそ「八重歯」くらいのものでしょう。そこに紛れても勝つ。いや、客観的に見たら負けているのかもしれませんが、主体自身で「いちばんキュートな八重歯が俺だ」と言い切る。八重歯の魅力もそうですし、八重歯込みでの自身全体の自信でもあるのでしょう。これが格好良くて可愛くて面白かったです。



#45

いつかまた音楽が、って目をとじる ひさかたの、はひかりにかかる


/ 戸澤ユキ  57577展公募企画 テーマ「音楽」岡野大嗣選(初出ではないかもしれません)

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/2nd_lightkeeper

コメント: 目をとじる、以降が祈りの言葉のように思えました。主体が実際にいるのは音楽のない世界かもしれないけれど、その祈りの中では音がある気がします。遠くにあるひかりを「ひさかたの」のちからで導いて、いまここに本当に接続してくるような確かさを感じました。



#46

取っとくの上手そうだ、と渡される小石レシート映画の半券


/ 高野知子  結社誌「未来」2022年3月号

https://twitter.com/tomoko12257


推薦した人: https://twitter.com/gushikawagushio

コメント: 「小石レシート映画の半券」の組み合わせが絶妙です!



#47

「クイックルワイパー検定受験中ごっこ」をしつつ攻めてゆく角


/ 黒澤沙都子  結社誌「塔」2022年5月号 若葉集

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/midiumdog

コメント: 「クイックルワイパー検定」はパワーワード。単調で面倒な家事をこなすことをユニークに表現しつつ、角を攻めているところに、検定で合格しようとする真剣みも感じられるバカバカしさがかえって毎日家事をしなければならない哀愁を感じさせる。



#48

剃刀を肌にあててるときにだけ人工雪の気配に気づく


/ 紺野藍  連作「ふりかざす」https://twitter.com/deepblue_spica/status/1513490482478792705

https://twitter.com/deepblue_spica


推薦した人: https://twitter.com/inari_karasuma



#49

冬の日の眼に満つる海あるときは一つの波に海はかくるる


/ 佐藤佐太郎  歌集『開冬』「寒渚」1970年

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/takahashi_ry5

コメント: 2022年3月27日放送のNHKの番組「完全保存版 絶対覚えておきたい! 究極の短歌・俳句100選」にて栗木京子選。佐藤佐太郎の短歌を語り、伝えることは歩道会員の使命である。



#50

のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にゐて足乳根(たらちね)の母は死にたまふなり


/ 斎藤茂吉  歌集『赤光』「死にたまふ母」1913年

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/takahashi_ry5

コメント: 2022年3月27日放送のNHKの番組「完全保存版 絶対覚えておきたい! 究極の短歌・俳句100選」にて渡部泰明選。斎藤茂吉生誕140年の節目に読むべき一首。



#51

祝福を 花野にいるということは去るときすらも花を踏むこと


/ 榊原紘  歌集『悪友』2020年

https://twitter.com/hiro_geist


推薦した人: https://twitter.com/inari_karasuma



#52

揖保乃糸で流しそうめんするらしい秋本邸の庭のせせらぎ


/ 笹公人  結社誌「未来」2022年4月号

https://twitter.com/sasashihan


推薦した人: https://twitter.com/gushikawagushio

コメント: 確かに大金持ちの人は、流しそうめんにも高級食材を使ってそうです。



#53

無題という題がどれだけうつくしいことかを伝えたくて会いにゆく


/ 笹川諒  歌集『水の聖歌隊』(書肆侃侃房、2021年)

https://twitter.com/ryosasa_river


推薦した人: https://twitter.com/k_hayatsuki

コメント: 「無題」という連作の最後の一首。一連には、言葉から詩歌が生み出されるときの心象風景が描かれているようにも感じます。無題である、ということは読み手側に想像が許されていることかもしれません。読み手の、そして会いにゆく相手の想像力を信じてやまないような、透明な可能性を感じさせてくれる一首です。



#54

思ひ出すだけならあなたは死者になる冬の終はりの長い長い雨


/ 山下翔  歌集『温泉』(現代短歌社, 2018年)

https://twitter.com/Yamashio_


推薦した人: https://twitter.com/fufunag

コメント: 歌集を読んでずっと心に残っていました。大切なひと、会わないで(会えないで)いるけれど確かにそのひとは心の中にいて。ただ思い出しているだけなら、そのひとは動かない過去=死者になってしまう。主体が自身の感情と向き合いながら時間の流れを感じていることが、下句によく現れていると思います。



#55

おこられたくらゐでやめたらだめなんだ一生は一度しかないから


/ 山下翔  ネットプリント「ミルクの時間」2022年05月17日発行

https://twitter.com/Yamashio_


推薦した人: https://twitter.com/akazomewemon

コメント: 連作のなかで、主体が主体の内省に呼びかけているような印象のあるお歌と読みました。短歌に関することだとしたら、主体から読者への呼びかけのようにも感じます。



#56

かたはらに灯を置いてあるすぐにでもあなたの帰路を示せるやうに


/ 山階基  早稲田短歌第43号 https://wasedatanka.web.fc2.com/wasedatankaweb/43/wasetan43_30shu.pdf

https://twitter.com/chikaiuchini


推薦した人: https://twitter.com/2nd_lightkeeper

コメント: やわらかい韻律の中に差しはさまれる、すぐにでも、の鋭さにひりひりしました。主体の傍にいまあなたはいて、でもいつ帰ってもいいように、灯を置いている。あなたの帰る場所は他にあり、もしかしたら灯を持っていつか発つのかもしれない。私はそのように読みましたが、旧友にこの歌を見せたところ「主体の傍にいまあなたはおらず、でもいつでもここに帰って来られるように、灯をともし続けている。」という読み方をしていました。いま傍にいていつか別れが来ることと、いま傍にはいないけれどいつか帰ってくると待ち続けること、どちらがよりくるしいだろうと印象に残った歌でした。



#57

めいっぱい広げたシーツで抱きしめる春風、おかえり、少し痩せたね


/ 汐見りら  2022年04月15日 うたの日 題「春風」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2937b#b20220415010

https://twitter.com/sio3rira


推薦した人: https://twitter.com/nogawatmoki

コメント: 風を擬人化する、洗濯物で表現する。こう言っては何ですがどちらも見たことがあるはずなのに、読み返すたびに胸がいっぱいになります。作者のお人柄か、技術か、秘密が知りたくて繰り返し味わっている短歌です。



#58

この屑は五秒前まで偉そうにパン・ド・カンパーニュと呼ばれてたっけ


/ 手塚マキ  NHK短歌 題「パン」笹公人選一席

https://twitter.com/smappatekka


推薦した人: https://twitter.com/Tohakumutun5057

コメント: パン屑への着眼点とパンドカンパーニュの字余りをつかうてんがすごいですね。



#59

水平線にまぶた落ちれば夕凪は誰より先に聞こえた寝息


/ 小泉キオ  2022年4月28日 いちごつみ https://twitter.com/kiokoizumitanka/status/1519661620909072384

https://twitter.com/kiokoizumitanka


推薦した人: https://twitter.com/hiwa_towa

コメント: 水平線とまぶた、夕凪と寝息という幻想的な組み合わせが登場し、安らかで美しい世界が浮かぶお歌だと思いました。



#60

おつ柳行李か粋な運び方力士のひよいと抱へたる道


/ 小田虎賢  NHKラジオ第一「文芸選評」2022年4月23日放送 テーマ「昔、家にあったけど今はないもの」 選者:山田航さん https://twitter.com/nhk_radiru/status/1517696419456589824?s=21&t=BCobI4IBoIcS8msqW_s0RA

https://twitter.com/


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#61

「離婚したら名字どっちになるのがいい?」走るボルボの灰皿あふれる


/ 上坂あゆ美  歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』(書肆侃侃房、2022年)

https://twitter.com/aymusk


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コメント: 歌集の名前もさることながら、小さい頃に両親の離婚を経験した私にとって同じシチュエーションではなかったものの、作者の気持ちがよくわかる。離婚のあと腐った私だったがこの歌と歌集がもし当時にあったら腐らなかったかもしれない。



#62

野比、廊下に(花に)(言葉に)(喪失に)(誰かの愛に)立っていなさい


/ 深海若  https://twitter.com/MUM_nyakuma/status/1529973771578544128

https://twitter.com/MUM_nyakuma


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コメント: 感情のようにあふれだす並列と、祈りのようなパーレンの連なり。わたしたちが立てる場所は、立つべき場所は廊下だけではないのかもしれなくて、花が、言葉が、喪失が、誰かの愛がわたしたちを立たせていてくれること、あるいは次の一歩を踏みださせてくれること、そのことがただ鮮明に美しく浮かびあがってきます。「野比」は固有名詞でありながら、また読み手ひとりひとりの象徴として、いまだにどこかの廊下に立ってもいるのでしょう。



#63

「ピッピカチュ!」「『戦時中、慰安婦という存在は普通だった』と、言っているのニャ…」


/ 深山睦美  2022年5月14日 筋肉短歌会『ポケモン短歌』

https://twitter.com/57577_77575


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コメント: 一読して、天才だと思いました。我々はポケモンたちの言葉を、ニャースという唯一の通訳者を通してしか知り得ない。ピカチュウがこういう思想なのだとしか読めない歌ですし、作者の意図もそれ(見た目はかわいいピカチュウもなに考えてるかわかんないよ)かもしれません。しかし深読みすれば、ニャースの意思ひとつで世界は戦争にも平和にも傾き得る危うさが読み取れる。通訳だけでなくメディアも同じで、結局は切り取られた言葉なら(発信者の不断の努力があってすら)客観的な事実などと言うものはあり得ないのかもしれない。歴史学をかじっていたころ、「修士以上で研究する気なら、一次史料に原語であたれ」と散々言われました。作者はマスコミにお勤めのようですから、メディアの危うさも、一次資料のグロテスクさもよくご存じなのでしょう。ピカチュウの真実を知るため、我々はまず、自らピカチュウの言語を理解しなければならないのです。たとえ輝きを目指してたどり着いた月面が、何も実らぬ荒野だとしても



#64

空はいつもわたしを映したりしない 薄桃色の折りたたみ傘


/ 真崎あや  2022年05月01日 うたの日 題「映」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2953d&id=17

https://twitter.com/ayayamk


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コメント: 選歌のときは上の句が読めていなくて、とにかく下の句の「薄桃色の折りたたみ傘」にとても惹かれました。そのあともう一度じっくり読んで、「空はいつもわたしを映したりしない」は「空はいつもわたし(の感情)を映したりしない」ということに気づきました。「わたし」はなにかいいことがあって外に出たけれど、雨が降っていた。それで薄桃色の折り畳み傘をひろげたところ、なのかなと。雨の空はわたしの気持ちとは合っていなくて、ひろげた薄桃色の折り畳み傘こそが自分のいまのうれしい気持ちを表してくれている、という風に読みました。作者の真崎さんがコメントを読んで、折り畳み傘がお守りになるというのがとても素敵だなと思いました。私は折り畳み傘を持たない人間なので、「薄桃色の折りたたみ傘」になんかちょっとあこがれみたいな気持ちも持ちました。



#65

できないと悲しむ祖母のあやとりをそれっぽく取る たぶん花だよ


/ 神丘風  http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2903c

https://twitter.com/kmtrf4


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コメント: とても優しい情景だと思います。この歌を読んで、私が中学生のころ亡くなってしまった祖母のことを思い出しました。短い期間で急速に認知症が進み、自分もまだ若くどう対応したらよいか迷いながら接する中で亡くしてしまい、心残りも多かったのですが、この歌を読んで、あのとき介護に絶対的な正解(あやとりにおける正しい名称のある形)などなくて、ただ心が交流できていれば、それだけでもきっと私達はよかったのだ、と感じることができ、深く心に残りました。



#66

戦争を始めた人が飼っているおれの故郷のうつくしい犬


/ 神丘風  https://twitter.com/kmtrf4/status/1496836210974543873

https://twitter.com/kmtrf4


推薦した人: https://twitter.com/xi_zhen_ivUT

コメント: 恐らく短歌の枠を越えて非常に注目された歌だろう。結句の〈犬〉を歌全体で描写している構造だが、初句から読みすすめるなかで非常に重いテーマをごくごく自然に読者へ注入してくれる作りだと思う。かの侵略戦争への強烈なアンチテーゼでありながら高度な詩として成立しているうえに、作中主体の〈故郷〉への意識を触媒にして、今まさに〈故郷〉を侵されている人々の心へ寄り添う奥行きが感じられる。



#67

点滴がもうすぐ終わる雨上がり待ってるようにあとひとしずく


/ 神保一二三   うたの日 2022年5月19日「点滴」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2971g&id=37

https://twitter.com/jimbo_hifumi


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コメント: 点滴が終わるのを待つ心情がとてもリアルながら、明るい読後感があるところに惹かれました。



#68

シャンプー 僕は自殺をしてきみが2周目を生きるのはどうだろう


/ 青松輝  個人誌「untitled」 https://booth.pm/ja/items/3643704

https://twitter.com/_vetechu


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#69

つらい恋してきたんだねじゃあ俺はエヴァの話をしてもいいかな


/ 川島薪  2021年2月18日 うたの日 題「かな」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2516c

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/onborn6

コメント: 男女の話なのでしょうが、相手からしたら「つらい恋」の話でも、主体にとっては「割とどうでもいい長い話」ですよね。それに対して、おそらく相手は興味のなさそうな「エヴァの話」を持ち出すユーモアが好きです。会話のドッヂボール感。でも主体の方が少し上から相手を見下している感じが心地良いです。それでいて相手からは一方的に自分勝手とか思われたりするのかと思うと滑稽で面白いです。主体側が相手と向き合いつつもあくまで客観的な視点なのが良かったです。景がありありと浮かび、読んでいてとても楽しかったです。



#70

区切れない海のどこかでこの国に生まれたときから降っている雨


/ 早月くら  2022年6月1日 うたの日「区」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2984h&id=27

https://twitter.com/k_hayatsuki


推薦した人: https://twitter.com/2nd_lightkeeper

コメント: 生まれたときからすでにそうだった、というなす術のなさや、異国や地球全体ではなく「この国」に焦点を定めたところに、現実の重みを感じます。主体はおそらく雨が降る区域の海にはいなくて、でも雨が降っていることは知っている。区切れない(はずの海を区切ってしまった)と感じているのか、区切れない(からその雨はいつか自分のところに届く)と感じているのか、どのように捉えても胸が塞がる気持ちがします。けれど、雨が降り続けていると認識している主体の存在は、雨の降る海にいる者にとって、時として救いにもなるのではないかと思いました。



#71

まぶしさの底を泳いだ新緑の影は波紋のようにゆらめく


/ 早月くら  短歌誌「うたそら」第8号(2022年5月) テーマ詠「新」http://kohagiuta.com/utasora/08/index.html

https://twitter.com/k_hayatsuki


推薦した人: https://twitter.com/hiwa_towa

コメント: 光を纏う新緑の影に注目し、その揺らめきを詠んだ、とても美しく詩情の感じられるお歌だと思いました。



#72

非力ゆゑにあなたは無敵 口開けて風花を待つ口のももいろ


/ 太田宣子  2022年01月08日 うたの日 題「敵」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2840g#g20220108026

https://twitter.com/


推薦した人: https://twitter.com/negototoshi

コメント: かっこよくてかわいい最高の歌で大好きです。「口開けて風花を待つ口のももいろ」が魅力的すぎて、ほんとに無敵!と思いました。



#73

電線がふるえて落ちる雪いつかそういう思い出し方をする


/ 第二灯台守  2022年01月07日 うたの日 題「昨日の題からどれでも」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2839a&id=3

https://twitter.com/2nd_lightkeeper


推薦した人: https://twitter.com/natsunoyuugata

コメント: 大雪の明くる日、自分も似た景色を見たのに言葉にできなかったことを、こんなに美しい歌にできるなんて!と衝撃を受けました。この歌のことを「いつかそういう思い出し方をする」ような気がします。



#74

星雲の夢が激しく煌めいてすてきな射精で春がはじまる


/ 短歌練習  2022年04月22日 うたの日 題「夢」 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2944e&id=24

https://twitter.com/TathandlungS


推薦した人: https://twitter.com/withoutSSRI

コメント: キャッチーでありながら、完成度高く端正な短歌だと思います。イメージの連関、結句までのe音と結句のa音。ひらがな。激的なイメージを連ねながらも幻想的な柔らかさに収束するバランス感。それらが組み合わさって出来る、上の句から下の句にかけての拡がりが一等美しく、全体として神秘すら感じさせ、大変魅力的です。



#75

汗ばみし有閑マダムの胸元にカプチーノのサイズをたずねる


/ 中山一朗  結社誌「未来」2022年5月号

https://twitter.com/Ichiro_nakayama


推薦した人: https://twitter.com/gushikawagushio

コメント: ここから始まる情事に期待してしまいます!



#76

うなずくよあなたがオチを作らずにそれを話せるようになるまで


/ 中本速  2022年4月17日 作者Twitter https://twitter.com/sknkmt02/status/1515693682040754182

https://twitter.com/sknkmt02


推薦した人: https://twitter.com/hicrown

コメント: 本当はただ聞いてほしい話をただ聞いてもらうことができずうまいことオチを作ってしまう「あなた」も、それに気づいていながらただうなずくと決めた詠み手も、目の前のひとへの思いやりが温かくて、切ないくらいに優しい歌だと感じました。



#77

100(いちぜろぜろ)-0001(ぜろぜろぜろいち) 東京都千代田区原子力発電所行


/ 仲原 佳  2022/5/30 毎日歌壇 加藤治郎選 https://mainichi.jp/articles/20220530/ddm/014/040/025000c

https://twitter.com/watch_niconico


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コメント: 郵便番号と宛先のみという情報量ですが、その事務的な冷たさがこの虚構に説得力を持たせていると感じます。仮にもっと直接的なメッセージや説明が入っていたら皇居に原子力発電所があるという世界観は薄っぺらくなってしまいます。この並びだからこそ、私達の歴史とは違う部分と重なっている部分を意識させ、世界観に広がりを持たせています。また多くは語らないシンプルな並びがかえって、メッセージ性を帯びているようにも思わせます。想像を掻き立てる衝撃的な一首でした。



#78

戦争も歌にするのと問うきみに一拍置いてうんと答える


/ 仲原佳  2022年5月21日 日経歌壇 穂村弘選

https://twitter.com/watch_niconico


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コメント: この半年間、たくさんの戦争を詠み込んだ歌に出会いましたが、ひときわ心に迫る歌でした。隣国の戦争とどのように向き合うのか、私自身が問われているように感じたからだと思います。



#79

大丈夫わたしもさっき起きたとこ、ところでこの星、海があるのね


/ 鳥さんの瞼  http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2989e&id=6

https://twitter.com/withoutSSRI


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コメント: 遠い星から来たふたり、コールドスリープでしょうか。宇宙船から海辺に降りたって後から降りてきたもうひとりへと言った台詞、なのかなぁと思いました。海のない星から来た、いや海が無くなった星から来たのでしょうか。妄想が止まりません。



#80

大きめの地震のあとは電話しない走る時間を減らしたくない


/ 嶋稟太郎  歌集『羽と風鈴』「大きな窓のある部屋に」(書肆侃侃房,2022年)

https://twitter.com/smrntr


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コメント: 嶋さんは東北人として、残すべき歌だと思って歌集に載せたはず。私は東北人として、今、そしてこれから、人々に伝えるべき歌だと思った。



#81

詩をすべて忘れるみたいに妹はウィルキンソンを飲むようになった


/ 湯島はじめ  2022年6月6日ネットプリント「みずつき 11」

https://twitter.com/hajime_yu11


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#82

たらちねの母になりたきひとに添ひそつと背(そびら)を支ふるものなり


/ 奈瑠太  https://twitter.com/nalda_aa/status/1523333304787021825?s=21&t=ffPClKNoP5z79Oq3P5nwpA

https://twitter.com/nalda_aa


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コメント: 母親とのわりきれないしがらみを抱えつつも、不妊に苦しむ「母になりたい」ひとたちの力になることを決めた主体を描いた連作「愛する」の最後の一首。自分のくるしい場所と向き合うことになるとしても、それでも、誰かを助けようとする主体の決意に涙が出ます。



#83

にわか雨受けて歩けばとりどりの水玉模様になるワンピース


/ 飛和  うたの日 2022年5月4日題「様」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2956f&id=15

https://twitter.com/hiwa_towa


推薦した人: https://twitter.com/kiokoizumitanka

コメント: 雨をうつくしくうたう歌は多いですが、こんなに明るい気持ちになる雨のうたはなかなかないなと思い惹かれました。



#84

生み終えしのちの清しさ林檎樹は両手を広げ雪を迎える


/ 俵万智  https://twitter.com/tawara_machi/status/1479069232579375107?s=20&t=VUOZxKrtwVgGMlPVSqQ3tA

https://twitter.com/tawara_machi


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コメント: 最後の一首、散々悩みましたが、敢えてだれもが知る有名人のTwitterから選びました。そのまま読んできれいなうたですが、林檎樹とご自身を重ねて詠まれているのだろうと思うといっそう美しさが増します。林檎の樹に雪が降っている。ただそれだけなのですが、意味合いとしても、姿かたちを考えても、この上の句から導かれるのは林檎の樹しかないと思います。他の名詞に入れ替えがたい真実さが、詩人の詩人たる所以だと痛感します



#85

うまい棒ぐらいまっすぐ名乗りたい よわい人です ずるい人です


/ 蜂谷希一  2021年01月20日 うたの日 題「うまい棒」http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2487d#d20210120010

https://twitter.com/hachiya_kichi


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コメント: 私もこれくらいまっすぐに歌を詠みたいとよく思い出します。



#86

もう恋じゃないけどきみの息災を祈ってしまう手癖のように


/ 牧角うら  2022年5月13日 うたの日『恋』 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2965i&id=64

https://twitter.com/mkdoki


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コメント: 「手癖のように」祈るというのは少し強がっているようでもあり、長い間祈り続けてきたからこその手癖でもあり、その祈りだけが恋が終わってしまった「君」との接点なのかもしれません。苦しいほど共感しました。



#87

たん、さん、すい、すい、のところでもう夏がちょっと泳ぎ出しちゃってるじゃん


/ 睦月 雪花  ネットプリント「みずつき 11」2022年6月6日

https://twitter.com/mu_tsu_ki_s


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コメント: すい、すいのかわいらしさと自由なリズムにやられました。たん、さん、すい、すいのアイデアがユニークで季節ともあっていて忘れられない一首です。



#88

「ジャジャジャジャーン 音楽」で検索すれば見つかる世界できみに会えない


/ 睦月 雪花  2022年4月25日 うたの日 題「じゃ」

https://twitter.com/mu_tsu_ki_s


推薦した人: https://twitter.com/hicrown

コメント: こんな探し方でいいの?みたいなものはすぐ見つかるのに、単純で簡単な世界のはずなのに、きみには会えない。それって探し物が見つからない複雑な世界で会えないことよりも残酷だな、と思いました。「ジャジャジャジャーン」の軽快でどこか投げやりな字面から「きみに会えない」への切ない転換が締め付けられる胸をそのまま表しているようでした。



#89

音楽はぼくを一人にしてくれてぼくを一人にさせてくれない


/ 木村槿  57577展「みんなの短歌募集」岡野大嗣選 テーマ『音楽』

https://twitter.com/kimura_tanka


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コメント: 好きな曲を聴くたびに思い出す歌です。周りの雑音を遮断して一人になれること、一人ではないと思えること、どちらも音楽の持つ強さだと思います。とても共感しました。



#90

ひとすぢの薔薇のいのちのためのみづ箕面ビールの小壜に満たす


/ 門脇篤史  ネットプリント「too late2.1」 2021年12月26日発行

https://twitter.com/508atsu


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コメント: 薔薇を活けるためにビール瓶に水を入れただけのお話なのに、丁寧に詠むとこんなにも名歌になるというお手本の歌だと思い引きました。



#91

だれひとり会わない日々に歪みだす今日もきのうもとぎれない川


/ 鈴木精良  結社誌「塔」2022年5月号若葉集

https://twitter.com/fufunag


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コメント: コロナ禍が続く中で、引き続き人と会う機会は少なくなっている。昨日も見た川が歪んだように感じてしまうのは、川ではなく、自分の心に歪みがあるからだろう。歪んでも「とぎれない」という表現に、人の感情とは別に日々は進行していく残酷さまで表れているようで、抒情的に感じた。



#92

全色がふたたび揃う春の日の校舎のように賑やかな花器


/ 六厩めれう  うたの日2022年4月10日『自由詠』 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2932g&id=56

https://twitter.com/mereumumai


推薦した人: https://twitter.com/xHksbNR4wv1wj8M

コメント: 出て来ない人の存在が感じられるところが魅力的です



#93

み空へのたて笛として老木は鳥にその身をつつかせてゐる


/ 朧  うたの日 http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=2871g&id=34

https://twitter.com/rou_tanka


推薦した人: https://twitter.com/xi_zhen_ivUT

コメント: 縦笛に喩えられた〈老木〉。森の中でひときわ高く、古い樹をイメージした。樹と対面している作中主体にとってそれは空(世界・宇宙)と繋がる笛であり、宇宙にとってもこの森を介して主体と繋がる笛でもある。啄木鳥がリズミカルに樹をつつく音に包まれながら、森羅万象の連環に読者も組み入れられたかのような読後感が心地よい。



#94

塹壕の森の泥濘(ぬかり)に焼け焦げたヴオトカの瓶が陽をうけてゐる


/ 菫舎  2022年04月02日 うたの日『 ウォッカ 』

https://twitter.com/tata3noheri


推薦した人: https://twitter.com/sugartani

コメント: 現代日本を平和に生きる私たちが、テレビでしか知らない戦争を真実味を帯びたまま詠めるギリギリのところではないかと思います。作中に人はおらず、痕跡だけが生々しく残っています。メディアを通して当たり障りなく知った戦争のワンシーンでしょう。もしかしたらこれすら作者の想像かもしれません。読者が想像させられているこの生々しい景色は、事実ではないから美しいのでしょうか。私は、これよりも等身大に思える戦争詠を知りません。






おまけ

もっとも新しい短歌

たん、さん、すい、すい、のところでもう夏がちょっと泳ぎ出しちゃってるじゃん

/睦月雪花 ネットプリント「みずつき 11」2022年6月

もっとも古い短歌

のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にゐて足乳根(たらちね)の母は死にたまふなり

/斎藤茂吉 歌集『赤光』「死にたまふ母」1913

今年の短歌2022上半期に参加いただきましてありがとうございました。たくさんの良い歌に出会えてうれしかったです!!2022年の後半もみなさまにとって良い出会いのある年になりますように🙏

また次回の参加をお待ちしております。


今年の短歌2022上半期

Fin.


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